「え…」

愛里香も驚いている。

「だってあれは?」

そう未遂だった。

キスをしようとした時、あげはの顔が浮かんだ。

そう。と言うときの顔が。

オレが断った後に、諦めたような表情。

脳裏を巡る表情に笑顔は一つもなかった。


それがオレの動きを止めさせた。
今まで、あげはに何もしてやっていないのに 、これ以上あげはを裏切ってどうするんだと、心の奥で訴えた。