それは真ん中に座っていた男の声だった
し……んと静まり返る店内
そこまで大きな声でもないのに皆が黙ったのは、その声に"重み"があったから
「飯の事は礼を言う。だがオレ達は飯の為だけにこのフィリーズ島に来たわけじゃねぇ。」
皆がゴクリと唾を飲む
まさか金をよこせだとかか?
少なからず、村人達は海賊を歓迎していた。害を与える連中にはみえなかったからだ
緊張が高なる。それはオレも同じだった
「8つの島の一つ、北を治めていた奴に会いたい。」
全員が目を見開いた
「北……。」
そう呟いたオレは店内の二階へと繋がる階段を一気に駆け上がっていた
二階には3つ部屋があり、一番奥の部屋に転げるように入ると中身を確認せずにカバンをひっつかみ、刀を持って窓を突き破って外に飛び出た
パリーンッ!!
と大きな音が響く
この下は厨房、きっとおっちゃんが驚いていて窓を開けるだろう
「なんだなん……うわぁぁぁ!!」
ガラスの破片と共に降ってきたオレを見るなり腰を抜かすおっちゃん
「悪ィ!」
「待たんかアレックス!!」
おっちゃんの叫びを無視して茂みへと走っていった
「鬼ごっことはおもしれぇ。」
「あんたさっきの海賊の……!」
オレの後を黒いマントを肩にかけた男が追ってくるのをオレは知らない
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