ガタタッ…


私は大きな音で目を覚ました。






「えっ!?

ちょ、先輩!?」


知らない人の声がする。


誰だろう、女のひと?






「頼む山下、どうにかしてくれ!」


あ…

まーくんの声…



不思議。

体が思うように動かない不安が、まーくんの声を聞いただけで消えていく。





「え、ちょっと待ってください」


「お前だけが頼りなんだよ」


「先輩、落ち着い……」


「見てくれ、苦しそうだろ!?」


二人の会話が、一瞬止まった。


「え…」




「な、何ですかこの美少女!!」


「今日の朝からひどい熱なんだよ」



喉がムズムズして咳をしたいけど、

咳をするたびに、今度は頭痛がひどくなる。



熱い

気持ち悪い…




「せ…先輩の妹さんですか?」


「いや、だから…ちょっと色々あって


とにかく、お前何かそういう資格持ってたよな?

どうにかしてくれよ!」


「わ わけ分かんない…」



まーくん…

声大っきいよ…頭痛い…



「…わ、分かりました

事情は後で聞きますから、とりあえず先にこの子どうにかしましょう」




その女の人の手が、私の額に近づいてくる。

びくっとして手を振り払いたかったけど、体がいうことを聞かなかった。

ひんやりしてる。


「あっつ…

こりゃ大変だね。」


「山下!

何かいるものとか…」


その人はまーくんの方をばっと振り向いて、しーっと手でサインをした。


「さっきはうるさくしてごめんね」


意識がもうろうとする中、その人の優しそうな笑顔だけはくっきりと脳裏に残った。