『この者は最後まであなたのことを護り通した。
あなたをも滅ぼしてしまう闇魔法があなたを包んだ瞬間、フィルはその帽子に祈りを込めた。』


「この……帽子…」

ポタ……

白い帽子に雫が落ちる。暖かく、切なる思いの詰まった涙…


『守護の宝珠たる私に…この子を守りたいと…
何度も、何度も…

決して届くはずのない人間の声があなたのために…』


「わ…たし?」


『今のあなたの気持ちと同じ。
あなたには守護のその力と心がある。

過去の偶像に負けてはなりませんよ。』


「……はい!」

ジュンは白い帽子に涙でぐちゃぐちゃになった顔を押し付けながらも強く、大きな声で返事をした。
フィルに聞こえるように…


宝珠はヒナに静かに向き直ると、その細い手を本に触れながらこう続けた。

『……街と街人は時の宝珠が無事時空の片隅に保管しています。リイムに頼み、元に戻してあげなさい。』


本は翡翠色に輝き、その力を収めた。

宝珠はヒナの側で泣きじゃくるジュンに軽く微笑むと颯爽と姿を消した。



「私も護るよ…」

誰にともなく、ヒナはそう呟かずにいられなかった。