「あなたは………」

「まさか宝珠か……?」

「フィル…姉?」


ジュンは自分の目を疑っていた。
今まで魔狩りだったその存在がフィルに姿を変えていたからである。


『…あなたの目にはそう見えるのですね。』

静かにジュンを見上げると今までの声が嘘のように柔らかい声で彼女は続けた。


『私は残念ながらあなたのフィルではない。
もちろん、今まで欺いた魔狩りと申す者でもない。』

「え……」


『今の私の姿はあなたの一番護りたいものを見せる。』

「あなた、やっぱり宝珠だったのね!」

ヒナはあの時感じた感覚を思い出しながら叫んだ。

『いかにも。私は守護の宝珠ヴェストル。』


「宝……じゅ?」

ジュンは気が抜けたようにその場に座り込んだ。
「なんで………宝珠が?」

『私は守護を司る宝珠。
この者が滅ぶ時に残したあなたを護りたいという強い気持ち。

あなたの護りたいと想う気持ちが宝珠たる私をあなたに残したのでしょう。』

「どうして…!前に拒んだじゃない!!」

ジュンの心はフィルへの思いと宝珠への怒りがごちゃ混ぜになり、その顔はいつの間にか涙でぬれていた。
宝珠はそんなジュンを目を細めながら見つめ、静かに続けた。

『…あなたの宝珠に対する気持ちはわかっていました。
たくさんのものを護りたいという気持ちも。
時の宝珠に拒まれたこと…なぜだかわかりましたか?』

「…………」

『あなたの護りたいという気持ちとは裏腹にその心の中には悲しみと憎しみでいっぱいだった…

この者が想い、残したものに気付いてほしかったのです。』


「フィルの想い…?」