『は…闇の力を秘めた魔法使いといえど、こんなものか…
こんな小娘、どこが脅威になるのだか…』


楔により、自由を奪われたジュンを一瞥し、魔狩りは吐き捨てるように言った。


捕らえたジュンと共にどこかへ転移しようと挙げたその手に微かな痛みが走る



『………?』

目線のみ後ろを見ると、一人の女の子が木の陰から歩きでてきた。

「ずいぶんと嫌味な手を使うようになったのね。」

手に持つ扇の羽飾りをもてあそびながら睨みつけているヒナラだった。

『…おまえか。何の用だ』

「用は無いわよ。見てるだけ。それが私の…」


そこまで言い掛けて、ジュンを見る。
向けられた視線に虚ろに上げたジュンの顔は、瞬時に彩を変える。


「あなた…ヒナにそっくり…?」

今まで口をつぐんでいたジュンがヒナラのその不可思議な姿を見て声をあげる。

『…。なんだ。まだ大丈夫じゃない。』

そのヒナにそっくりな笑顔と声をジュンに向けると、落ちていた白い帽子を拾う。


「………これ………預かるわ。」
「え…?」

「考えなさい。あなたのこれから。」


『……これ以上邪魔をするなら容赦はしないが?』


黙り、様子を静観していた魔狩りが口を挟んだ。
ヒナラはジュンに笑いかけると風のように消えた。