次第に光りに慣れ、細めていた目を
ゆっくりと開き今まさに手にしている
剣を見下ろす。

「こいつが…この聖龍剣の力……。」


柄にはいままでは無かった龍を象る
装飾が大きな珠を囲むようにはめ込ま
れている。
その派手な様相とは違い剣自体は軽く、
少しひんやりと冷たい。

外見と反比例して、その手にのし掛かる重圧と緊張感に胸は高鳴る。

~これなら…あのサマルってヤツ
だろうがなんとかなる…かもしれないな…~



【なぜ……!!】


「…誰だか知らない声の主さんよ。
大丈夫。あいつと一緒に心配しなくとも
必ず帰るさ。」

こうはまるで悔やむように聞こえた新たな声
にまるで自分の心に刻むように呟くと
顔をあげた。

そのこうの確固たる意思を感じたのか
声は一瞬沈黙し、もう消え入りそうな声で
語りかけた。


【…そうだな。信じよう。
我は……お前を。

我はこの空のもと約束の時を待つ。

忘れるな。お前の思いを。
お前を思う者を。
聖龍剣を…あいつを…よろしく頼む。】


「?」

声が微かに、宙を舞い、寂しげに余韻を残す。

~誰だったんだ……~

胸に引っ掛かるように声の主を思い巡らすが、声記憶の中からの主を見つけることはできなかった

「…そんな場合じゃねー!!」


同時にこうは残してきたヒナやリュウの姿を思い出しそれ以上深くは考えることなく
急ぎ山を下ろうと向きを返る


『その必要はない。
我も新たな宝珠使いの元へ出向こう。
主の強い想いにて我を導け。』

先ほどの声とは違う宝珠の方の声に素直に従い目を閉じる。


「そんなことできんのか。悪いな!」

こうはヒナやリュウ、ジュンの姿を
思い浮かべると同時に足下の
感覚が消えるのを感じた。