店から出るといつもの賑わいを見せている「アミール」の街。

その街の向こう、遥か北に見えているのは、切り立った崖と尖った地肌の山。
その山の真上はまるで夜のように暗い渦巻く雲に覆われている。


この街からみているだけでも相当な高さと、環境の厳しさが伝わってくる
あの険しい崖を人力で登るのは確かに無謀であった。


「あの山の更に上にもう一つの岩山があるらしい。
それが『光龍の頂』と呼ばれている場所と言われている」

リュウが見えない山頂を見上げながら呟く。

「あれのもう一つ上!?」
「私の飛行陣じゃ半分も登れないわね」

ジュンとヒナも山を見上げながら呟く。


「オレは…明日行く。」

「宝珠が必要でしょ?私も行くよ」

「お前は来んな」

即座に応えたこうの返事にヒナはこうを振り返る

「なんでよ!!言ってたでしょ!
宝珠の力が必要だって!」


「……これは、オレの問題なんだよ。」

ヒナの言葉を遮り、放ったこうの言葉には迷いもなく、意志が揺らいだ痕跡は見せなかった。


「こう……」



「じゃあ、明日山の下までみんなで行きましょ。見送りくらいいいでしょ」

ジュンはこうに諭すように声をかけ、ヒナの肩に触れた。

「…わかったよ」

そう言うこうは、まっすぐ崖を睨みつけていた。