「そうか……」

男は呟くようにそう答えると、ゆっくりと立ち上がった。


「あそこは、カストル星を想ったポルクス星が、空に一番近い場所を贈った場所だそうだ。
誰にも侵されぬ、無跡の場じゃ。

並の魔力じゃ登れはしない。
宝珠っちゅう力がいるそうだが……」


男はそれだけ言い、ヒナ達の様子を見た。
なにも言わずとも感じ取ったというように、言葉を続ける。


「あそこは、なぜか、闇の集団がよく来やがる。
加えて、聖龍剣の魔気が人を惑わすと謂われのある場所じゃ。
止めはしないが、覚悟を持っていくんじゃな。
俺が知ってるのはここまでだ」


「ありがとう!おじさん」
ヒナがお礼を言うと、こうは呟くように言葉を漏らしていた。


「魔気……剣が人を惑わす?」

男はこうを見つめ、もう一度諭すように応えた。

「剣は主の想いを背負い、相手とぶつかり合うモノじゃ。
良いも悪いも主しだい。じゃから、剣にも心が宿る。
その心は、己が滅びるまでずっと持ち光り続けるのじゃ

剣てのは、そうゆうもんじゃ」


こうは無意識に腕に触れていた。
あの剣が収められているはずの白い紋に。


「…ありがとう。おやじさん」

「…邪魔したな。」

「いや。無事だったらまた来い。客としてな。」

男はクシャッと顔をゆがませ笑うと店の奥に消えた。