「?どう…したの、こう」

ヒナは、自分と同じくヒナラの歩き去った路地をいつまでも見つめるこうに声をかけた。



「………………」

「…変なの〜」

「……」

返事もしないこうにしばらく待つヒナもいつしかしびれを切らし空気を変えるように声をかける。


「あ!さっきのサマルに負けたの気にしてんで……」


「負けてねぇ!!」


ヒナのからかいに急に怒りを露わにし、大声をあげたこうにヒナも驚いく


「な…なによ!」

「オレはあいつには負けない。それに………
リュウ!」

ヒナの抗議の声もものともせず、こうはリュウを呼ぶ。



「…なんだ。」

腕を組んだまま、探るようにリュウは返事をした。

「『光龍の頂』って知ってるか?」

「光龍の頂………か…。アミールの砦の近くの山の名所のことか?
おまえがどうしてそれを?」

リュウは聞きはしたものの、こうが話すつもりが無いのを見抜き、言葉を続ける。


「アミールは砂塵の集落だ。
夜は人の暮らせぬ極寒の地になる。
明日出発しよう。いいな?ヒナ。」


リュウはこうではなく、ヒナに答えを求めた。
こうは自身の手のひらを見つめ、やがて拳をにぎっていた。


「え?
そーだね、……なんだかわかんないけど、こうが行くっていうんでしょ?」


そうため息をつきながらこうを見やる。


~あいつ…なんでいきなり態度変えるのよ…それに急に行きたい場所があるなんて…~

何かが自分たちの中で動き出した……そんな混沌とした気配をヒナは感じていた。