「あいつは………あの、サマルの姿を見たとたん、走って…!」


「1人で?バカこう!!」
ヒナは手に持っていたクッションをにぎりしめた。


「…俺はこうを追いかける。ヒナとジュンは…」

「あ!」

ヒナはリュウの言葉を聞かないうちにリュウの横をすり抜け、走りだしていた。

「まあ、予想はしてたがな。」

「行きましょ!」


ヒナの後をリュウとジュンも追っていった。





街には闇の集団の式神、闇駒が放たれ、街の魔術師などが応戦していた。
そのなかでも空に覆う黒龍からは火の粉をまとった火球が放たれ、木々や家屋を燃やしていた。

街人は闇駒を退け、慣れた手つきで火を消しながら、結界の張り巡らされる丘へ避難しているようだ。


「………あいつら!!」


街の真ん中の噴水のある広場に、こうはいた。


空の上から感じる黒い視線に応じるように、聖龍剣を構える。

黒い視線の先に見えたのは、紅い、殺気を放つ瞳。

シェルーの操る黒龍の背でサマルが微笑しながら、冷たい瞳でこうを見下ろしていた。