悲しみしかなかった感情が、いつの間にか幸せに満ち溢れていたのです。
 何が起きたのかも分からないまま、フェアリー達はショコラの作ったチョコレートで誰かが幸せになるのが嬉しくて仕方だありません。


 新しいチョコレートが口に含まれる度に増え続ける空気に、堪えきれず箱の中から飛び出しました。
 フェアリー達はそこで目にした光景にさらに目を丸くしました。
 いつも無表情で食べてた彼が、笑顔でチョコを食べていたからです。
 彼の隣には、同じく笑顔の女性が座っていました。


「おいしいね」


笑顔で交わされる会話を聞いたココアとマシュマロは、溶けていくチョコレートに最高の幸福と極上の甘さをプレゼントしました。
 その出来事を読んだショコラは、不思議と涙が溢れて来ました。
 その涙には、二つの意味が含まれています。
 一つは自分のチョコレートを食べた人が美味しいと言い、幼い頃に出会ったフェアリー達が遥か遠く言葉も分からぬ街で誰かを幸せにして帰って来る事に。
 もう1つは、フェアリーの力をあてにし過ぎている自分にたいしての悔しい涙でした。


 ショコラは読んでいたノートを閉じると、涙を拭い静かに眠りにつきました。