「こんにちは、ショコラ」


 ショコラと呼ばれた女性がガラスケースにチョコレートを補充してると、お客様が入って来ました。


『こんにちは!
今日もお子さんに?』


「ああ、2箱分、美味しいのを見繕ってくれ」


『かしこまりました。』


 ショコラは、甘酸っぱいラズベリーを溶かして中に閉じ込めたチョコを含む様々な味と形のチョコレートを箱一杯に並べ、きれいにラッピングをして渡しました。


「ありがとう、また来るよ。」


 とウィンクとお代を残し、帰っていきました。
 次のお客様は、時々顔を見せる他国の男性で、この街にくると必ずFairyに立ち寄り、チョコ買って帰る常連様の一人です。
 たまに話す会話は、いつも家族の事で、二人の息子が居て、1人は自分の会社で働き、もう1人は学生なんです。と話した事をショコラは思い出しました。


「それじゃあ、また。」


『ありがとうごさいました。』


 優しい笑みを残し、Fairyを後にする男性の買ったチョコの中にも、フェアリーはついていきました。
 どこ場所へ行き誰の手に渡るのか、フェアリーは知っていました。
 行く度に貰う感情は、誰よりも悲しく、とても幸せとは程遠い物でした。
 それでも、奥底にある小さな記憶だけは、汚れる事無く幸せに満ち溢れていました。
 箱の中に忍び込んだマシュマロとココアは、なんの期待も抱かず、長旅を箱の中で眠て過ごしました。
 二人が目を覚ました時、既にチョコレートが溶けはじめていました。
 慌てて最後の仕上げに取り掛かったマシュマロは驚きました。