そのノートは今でも、毎夜書き続けられています。
眠る前、シンと静まり返った部屋の中、ベッドに潜り読むのがショコラの日課になっていました。


『いらっしゃいませ─』


次のお客様はお子様連れ。
ショコラは男の子に小さな期待を抱き、そっと見守っていた。
お母さんがチョコをデキュスタシオン(試食)をしている間、男の子はずっと同じ場所を眺めていました。
視線の先は、フェアリーたちがいつもいた場所。
ショコラはニッコリ微笑むと、この店で一番甘いチョコレートを男の子に差し出しました。


『フェアリーが見える?』


ショコラの問い掛けに、男の子は頷きました。
男の子は渡されたチョコを口に含むと、満面の笑みをショコラに向け「すごくおいしい!!」と言いました。


機嫌を良くした男の子は、フェアリーを指差し誰がどんな格好で、何人いるか、どんな話をしてるのかをショコラに話し始めました。
ショコラはその話に耳を傾け、2人のフェアリーが今も変わらぬ姿で居るのに安心し、帰っていく男の子に礼を言うと『またね?』と手を振り交わしました。