空を見あげた後で、私は視線を前の方に戻した。

「――あっ…」

そこにいたのは、森藤勇だった。

彼は、空を見あげていた。

その瞳は、どこか哀愁を帯びていた。

ふいに頭の中に浮かんだのは、今日のことだった。

彼とのキスを思い出したとたん、頬が紅くなるのを感じる。

何してんのよ、私。

恥ずかしくなって、私は逃げ出した。

彼の前にいるのが恥ずかしくて、その場から逃げ出した。

心臓がドキドキしているのは急に走ったからだと、私はそう自分に言い聞かせた。