「――何で私が…」

突然決まってしまったことに、私は落ち込むことしかできなかった。

私の他にも適任する人がいるでしょうが。

特に冴子なんか、私よりもしっかりしてるから任せれるのに。

「はあ、頼む相手を間違えてるよ…」

そう思いながら、私は会社を後にした。

春の夜は、まるで冬のようである。

冷たい夜風に、私は思わず身を縮めた。

「いつから温かくなるんだろ…」

そう呟いて、空を見あげた。

都会の夜は周りが明る過ぎて、星が見えない。

それは田舎育ちである私にとって少し寂しいことである。