別に気にしていると言う訳じゃない。

ただ怒ってないかとか心配してるんじゃないかとか、そんな感じである。

そう思いながら、彼に触れられた髪の毛先に視線を向けた。

ほんの一瞬の出来事だったはずなのに、それは長い時間に感じられた。

至近距離から見た彼の顔はすごく整っていて、心臓がドキッ…と鳴った。

長いまつげに、黒いビー玉をはめ込んだような瞳――全てが全て、印象的だった。

「私、絶対に頑張る!」

冴子の声で、私はハッと我に返った

つい、他のことを考えてしまったことを反省した。

「頑張ってね!」

そう言った私に、冴子は嬉しそうに微笑んだ。