彼女と出会ったのは、桜がよく似合う今の季節だった。

「ったく、何だよ…新入社員の案内係って」

俺はそうぼやいて、ため息をついた。

今から5年前の春のことである。

俺は会場前の受け付けを行ったりきたりしていた。

この春から我が社に入社してくる新入社員の案内係をするためだ。

会場は、ほぼ満席である。

腕時計を見ると、後5分で式が始まる。

「一体どうなってんだよ、この会社は」

ため息混じりにぼやいたその時、視界の隅に黒髪を捉えた。