私がここの喫茶店に通い始めたのが、中学3年の冬。



受験シーズン真っ最中の頃ー…







「…何してんだ?」




喫茶店の前で座り込んでいる私に、声を掛けてきたのが橘さんだった。



「風邪ひくぞ?すぐに家帰れよ」


「…帰りたくない」



「…は?」


「いえ…何でもないです」



ゆっくりと立ち上がり、店の前から立ち去ろうとした時ー…







「あったかいココアなら、飲ませてやるけど?」





その言葉に後ろを振り返ると、後ろ姿で手招きをしている。







「子供は、コーヒーは飲めないだろ?」



顔だけ後ろに向け、ニカッと笑いながら言った。




「…飲めるし…」




小さな声でぶっきらぼうに言ったが、その言葉は届いていない。





店に入って行くのを追うように、小走りで店に入った。