「お客さん来ないのに、営業してる意味あるんですか?」


「…」




絢芽の聞いた疑問に対して、眉間にシワを寄せた。



「あ…ごめんなさい。なんか、失礼なこと…いたっ」




絢芽のおでこに、でこぴんをした。




「お前がいるだろ」




ニカッと笑って、でこぴんをした絢芽のおでこを優しく撫でる。





「9時以降のお客は、お前しか受け付けないよ」



ドキン


絢芽は俯き、顔は真っ赤。



「…ありがとう…ございます?」



何て言っていいかわからず、疑問形になってしまった。





「ふ…はは!」




困った顔をしている絢芽を見て、橘はおもしろそうに笑った。




店内には、二人しかいない。





橘の笑い声だけが、響く。