「おい、すずめ」


カウンターで椅子に座りながら私を呼ぶのは、橘さん。


髪は真っ黒で短髪で、アゴには髭。
白のワイシャツに黒のズボン。
腰には、エプロンを巻いている。



この姿が、私が知っている橘さん。



「お前、今いくつ?」


「来月で16になりますよ」

「16か…まだまだ子供だな」

「橘さんと違って、若いんですよ」

「失礼な奴だな。まだ30前だっつーのに」



ぶつぶつ言いながら立ち上がり、私の頭をコツンと叩いた。



「ココア入れるわ」



そう言うと私の後ろを通り過ぎ、キッチンに入って行った。



通り過ぎるとき、タバコの匂いがした。


私にとっては、大人の香りー…



「…子供…なのかな」

小さな声で言った言葉はきっと、橘さんには聞こえていない。