テントを出ると、目の前にクレイグの顔があった。
「ふぐほぅお?!」
どう発音しているのか不思議な声を上げ、クレイグが後ずさる。
「……何やってんだ、お前……」
驚いたような表情はすぐに呆れた顔になる。溜息混じりに、聞いても無駄な気はするがとりあえず問いかけるウル。
いつの間にか雨が上がり、晴れ間もちらほら見えている。
「い、いや、中はどうなってんのかなーと……。っつかいきなり出てくんなよ! 危うくちゅーするトコだっただろ!」
まだ驚いた顔をしているクレイグの言葉に、ウルは「うぇっ」っと嘔吐するような仕草を見せた。
「っかーっ! 可愛くねぇやつ!」
クレイグは少し怒った表情を見せた。
その後ろからひょこっとキスティンが顔を出す。
「マーロウ君、そのテントで何してたの? レナに用?」
「いや、少し話があっただけだ」
水溜まりを器用に避けながら歩き出すウル。
そのウルに、背後からクレイグが声をかけた。
「ウル、どこ行くんだ?」
クレイグの声に振り返り、言おうとした言葉を飲み込んだ。
「………家に帰るんだよ」
咄嗟に、考えている言葉と違う言葉を口に出す。
旅に出る……一瞬そう言おうと思った。付いてきて欲しいとも。
だが、言えなかった。この旅は、クレイグには全く関係ないからだ。
町を出れば、モンスターだっている。街道は人の手が入っている分多少安全だが、それでも危険はある。
自分で決めた旅に、クレイグを巻き込めない。
ウルはそう思って言葉を飲み込んだ。
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