ドラゴン・テイル

 レナは、そっとウルの肩にタオルをかけた。

 ビクッっと、ウルが一度身を震わせる。

 レナは、まるで自分が苦しくなるような錯覚を覚えた。

 あの時は、どんな行動が正しいのかなど誰にも分かるはずがなかった。誰もウルを攻めるような事は言っていないのに、彼はあれからずっと苦しんだのだろう。

「マーロウさん…? 顔をあげて下さい」

 優しく、ウルを支えるように手を添えて静かに言うレナ。

「みんなを見て下さい」

 ゆっくりと、頭を持ち上げてテントの中に座り視線を巡らせる。全員が、ウルを見ていた。

「見て下さい、マーロウさん。ここにいる方々は、貴方に救われたんです」

 レナの言葉に、ウルは驚いた顔を向けた。
 優しく微笑むレナ。

「マーロウさんがあの時モンスターの注意を引いて下さらなかったら、ここにいる方々は怪我では済みませんでした」

 ゆっくりと、小さい子供に語りかけるように静かに話すレナの声。

「あの時、どうすれば良いかなんて誰にもわかりませんでした。でも、あのままだったら、間違いなくラーマさんが来る前に町は壊滅していました」

 微笑みを絶やさず、優しくウルの背中をさする。

「……レナちゃんの、言う通りだよ」

 少し離れた所で立ち尽くし、みんなと同じようにウルに視線を送っていたアネットが、レナの言葉に賛同した。

 それを皮切りに、一人、また一人とウルに言葉をかける。

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