テントに入ってきた人影に、レナは驚いた。
「マーロウさん?! やだ! ずぶ濡れじゃないですか!」
急いでタオルを手に掛けよる。
そんなレナには目もくれず、ウルはテントの中を見渡した。
先ほど立ち寄った医療棟程では無いが、テントの中で身を寄せ合うように座っている多くの怪我人達。
ウルは、彼らに深々と頭を下げた。
髪から水が流れ、ウルの顔を伝って地面へと落下していく。
テントの中が静まりかえり、屋根を打つ雨の音だけが木霊した。
「……すまなかった……」
消えそうな声で、絞り出すように言葉を紡ぐウル。
「余計な事をしてしまった。無駄に怪我人を増やしてしまった…」
あの時、無理にモンスターを町の外へ誘導したせいで、建物から崩れ落ちた石片が町人達を直撃した。
「俺がしゃしゃり出なければ、少なくともこんなに多くの怪我人は出なかった……」
少なくともウルはそう思っている。
「本当にドラゴンが現れるとは思っていなかったんだ。あいつなら……ラーマなら、町を壊さず、怪我人も出さず救ってくれていたかもしれないのに……」
朝からウルは医療棟に赴き、怪我人が収容された病室一つ一つを周り頭を下げていた。
少し震えている肩は、寒さのせいだろうか……それとも……。
頭を下げているウルの顔は見えない。
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