長い夜を終え、町は朝日に包まれた。

 だが、その朝日は、すぐに厚い雲に覆われてしまう。

 ─やっぱり天気悪い……。

 祭り明けの日はいつもこうだとレナは心の中で愚痴た。

 町に活気が満ち始めた頃、昨夜のモンスター襲撃で倒壊した建物や飾りを回収する町人達に紛れ、怪我人が収容された仮施設に足を運ぶ。

 怪我人の数が多く、医療棟に入りきれなかった比較的軽傷の町人が、臨時で建てられたテントのような建物に三十名程運ばれているのだ。

 レナは、数少ない精霊士として治療チームに参加していた。

 昨夜も、宴が開催されている中、基本的な治療術を身につけている多くの人達が必死に怪我人の治療に当たっていた。

 テントに付くと、治療メンバーの一人がレナに声をかけてくる。
 中年の、少し痩せた女性だ。

「おはよう、レナちゃん。今日も来てくれたんだねぇ。ありがとう。でも、無理するんじゃないよ?」

「おはようございます、アネットおば様。おば様こそ、早いですね。昨日は殆ど寝てらっしゃらないのでは? 余り顔色がよくありませんよ」

 少し顔が青白い。額に汗すらかいているところを見ると熱があるのかもしれない。

 ─命の恵みを司りし水の精霊よ─

 すかさず、レナは水の精霊を召還した。

 ─汝が慈愛の恵みを与えよ─

                  _