まるで、十年前の再現映像を見ているようだ……。


 ウルは堅く瞳を閉じた。脳裏にリムレットの姿が浮かぶ。

 笑った顔、怒った顔、悲しむ顔、考え込む顔……そして、泣き顔。

 少し明るい茶色い髪。
 見ているみんなを明るくさせるような鮮やかな笑い顔。


 全て、ドラゴンが攫(さら)って行った。ウル自身の心も一緒に……。


 ……許さねぇ…。


 瞳を開けば、あの時とは違うがドラゴンの姿。

 だが、ウルにとってドラゴンは皆同じだった。憎い対象以外の何物でもない。

 ドラゴンは尚も影を攻撃している。

 影の頭部に牙を立て、爪で胴体を地面に釘付ける。
 そのまま、頭と胴体を引きちぎるように首を上げた。


 みぢみじみぢ…………っ!


 例えがたい異音を放ち、血しぶきが辺りに飛び散る。

「う………っ」

 耐えかねてクレイグは目を背けた。

 辺りに錆びた鉄の臭いが充満していく。それでもウルはドラゴンを睨んでいた。

 気持ち悪くない訳ではない。異臭に顔を覆いたくなるが、それでも、ドラゴンに対する怒りの方が勝っていたのだ。


「ダースグレイブ」


 呟くように放った言葉に応じて、ウルの影が大きく揺れた。

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