片目を潰されたことにより影は怒り、クレイグに狙いを付ける。クレイグが今居る位置は、影より少し上の位置。
つまり、必然的に影の視線は上を向く事になる。片目が潰れた所為で視野も狭くなる。
すなわち、影の意識から下にいる人間の存在が消えることを意味する。
考えるだけの脳があるとしても知能生物ではない上、野生で育った生き物はどうしても理性より本能が勝ってしまう。
ウルはそれを利用しているのだ。
ジュルルルルル……ッ!
すぐ後ろから、影の鳴き声が聞こえる。届きそうで届かないもどかしさから来る怒りなのか、影はスピードを上げた。
ほぼ同時にウルもスピードを上げる。
─もうすぐ町を抜ける!
町を囲むように建つ塀の切れ目、塀よりも少しだけ高く綺麗に装飾を施された門が見えてきた。
とはいえ、もう日も下がり辺りは夜の闇に支配されているため、魔法によって灯された明かりで判別出来る程度だ。
─町を出て、戦えそうな場所はどこがある……?!
一番に思いついた場所は……町外れの小高い丘。
リムレットを最後に見た場所だ。
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