「じゃぁ、一つだけ良いか?! せめてもう少し高く飛んでくれねぇかな?!」
あまりにギリギリの飛行な所為か、時折足を曲げなければ当たってしまう程だ。
クレイグの言い分も切実なものだったがウルの答えは否だった。
「この高度も速度も理由があっての事なんだ。少し我慢しろ」
普通、獲物を狙う動物は、手の届きそうな位置に居る獲物を簡単に諦めたりはしない。
逆に、見てわかるくらい届かない所まで逃げてしまったら、すぐに別の獲物にターゲットを移してしまう。
影にとっての獲物は、視線を下げればいくらでもいる。
ウルの狙いはただ一つ。
あの巨大な化け物を町の外に誘い出すことだ。
クレイグを落とし目を攻撃させる事で、注意をクレイグに向けさせる。目はどんな生き物にとっても重要な機関であり、弱点でもある。
そんな場所を攻撃されれば、影がクレイグを振り払おうとする事など容易に予測出来る。
ウルは、クレイグがどこに飛ばされても確実に捕まえられるように、空中浮遊の魔法を解かず影の上で待機していたのだ。
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