ジャァァァァァァァッ!!
鋭い牙をむき出しにして、影が覆い被さるようにウル達に迫る。
─早いっ!
すかさず高度を保ちながら避けるウル。
踵を返し影から距離を取ろうとするが、すかさず追撃してくるスピードが早くて思うように動けない。
「くっそ……その図体でそのスピードは反則だろ……っ!」
ウルの口から思わず愚痴がこぼれる。
「もっと早く移動出来ねぇのかよ?!」
クレイグが叫ぶ。
「お前抱えてる分思うように飛べねぇんだよ!」
答えながら、紙一重で影の噛みつき攻撃をかわしていく。
空を一直線で進むウルとクレイグだが、建物の合間を縫うように追いかけてくる影との距離は一向に開く気配が無い。
「追いつかれちまうぞ?!」
クレイグの声を無視し、ウルは高度も変えずひたすら直線に飛ぶ。
「なぁ! もう少し高く飛べねぇかな?! 俺、いつ足が無くなってもおかしくないくらいギリギリなんだけどっ!」
無視。
「おい、ウル!」
「うっせーな! 黙らねぇと足どころか体ごとあいつの口に放り込むぞ!」
「ゔ……」
空中浮遊の魔法は、ウルの最も苦手とする分野だ。少しでも集中を切らせば、減速どころか墜落する可能性もある。
人一人抱えた状態で後ろからの攻撃を避けながらで、この速度を保つには話している余裕など無い。
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