建物の傍らには、まだ逃げ惑う無数の人影。
視線を少しずらせば、影の尻尾だか頭だかの先端部分を一生懸命攻撃している町の警備兵達の姿が見える。
「厳しいな……あんな攻撃じゃいくらやっても倒せそうにねぇぞ……蚊に刺されてた程度だろ、あれ」
クレイグの言うとおり、影は全くダメージを受けているようには見えない。
「……だろうな。だけど、蚊だって刺す場所考えりゃでかいダメージ与えることは可能だろ」
「って、どういう意味だ?」
ウルの言葉の意味がいまいちよく分からなかったクレイグは、ウルを見上げて聞き返した。
「お前、もし上から何か落ちて来てぶつかったらどうする?」
「? 何だよその質問?」
「いーから答えろよ。どうするんだ?」
クレイグは、少しだけ視線を宙に泳がせて答えた。
「そりゃ上を見るだろ? どっから落ちてきたのかなーとか……」
「だよな、普通はそうだ」
全く話の意図が分からない。
「だから、なんなんだよ!」
こんな悠長に会話している間も、あの影は建物を倒そうと体をうねらせているのだ。
クレイグの口調にも焦りの色が滲む。
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