きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
けたたましい悲鳴が木霊した。それと同時に、どこかの建物が倒壊する轟音。
辺りに居る人々の動きが、会話が、一瞬止まる。
「な、何……?」
隣にいるレナの呟きがウルにはっきり聞こえるほどの静寂が辺りを支配したのは、ほんの束の間の出来事だった。
少し離れた場所で、キスティンも強ばったように動かない。
ウルは辺りを見渡す。
特にさっきと変わったところは見当たらない。徐々に辺りが騒がしさを取り戻し始めた。
「今、何か悲鳴聞こえなかったか?」
「何か倒れるよーな音も聞こえたよねぇ」
「祭りの演出かなんかじゃねぇ?」
「十周年だしねー」
それぞれ行き交う人が自己解決するように話す。
だが……──
──ドゴンッ
巨大な『何か』が硬い物にぶつかる音。
再び辺りが静まり返る中、ウル達の近くにある一際高い建物が大きく揺らいだ。
「きゃぁぁぁっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁあっっ!」
建物は、まるでそこだけスローモーションのようにゆっくりと傾き始める。
建物の前に居る人々が、我先にと悲鳴を上げながら、半狂乱で逃げ出そうとした。
だが、只でさえ密度の多い場所で思うようには動けない。
パニックは伝染し、人々が巨大な大津波(タイダルウェィブ)の様にウル達の方へ押し寄せてきた。
「うわっ」
「きゃぁ!」
雪崩のように押し寄せる人の波に飲まれ、流されそうになる。
とっさに、ウルはレナの腕を掴み抱き寄せた。
_

