「はぁ〜、まさに一目惚れね! 奥手なレナがまさかの一目惚れっ! 驚きだわ〜」
本校舎の二階にある講義室。
足早に戻ってきたレナは、キスティンに今さっきの事を話した所、開口一番にそう言われた。
「ひ、一目惚れ…?!」
まだ赤い顔でオウム替えしに言うレナ。
「そう! 一目惚れ! クレイグの知り合いなら、今度遊びに行くときに連れてこさせようか?」
どこか嬉しそうにさらっと言うキスティンに、レナは慌てて手を振った。
「や、やだ! いいよそんな……!」
ようやく落ち着きかけた鼓動がまた速度を増す。
「きっと、会っても会話どころじゃないから……」
「そぉ……?」
どこか残念そうにキスティンが言った。
彼の名前は、ウルさんかぁ……。
それからしばらく、魔術師校に行く度にレナの視線はウルを探していた。
ウルを見かける度に鼓動が高鳴る。
秋に入り、冬になっても、レナはただウルの姿を見るだけだった。
「クレイグ……!
クレイグ、こっちこっち!」
キスティンは、クレイグを手招きして呼んだ。
ここは、クレイグの通う剣の学校。魔術師校とは違い、質素な作りだ。校舎は二階建てが一つだけ。
魔術師専門校で有名な町の為、剣を使う者は極端に少ない。
クレイグはそんな稀少部類の一人だ。
校舎は、専門校の前の通りを挟んだ向かい側と、極めて近い。
「あれー? キスティン?」
声と動きに気づき、クレイグが驚いたような、嬉しそうな顔をして近づいてきた。
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