全員の視線が医者に向く。
盗賊達も、セルフィリオーナもクレイグもコパンもレインも、具合を案じて氷水を持ってきた宿屋の主人まで。
医者は小さくため息を付いた。
「多分……、出来るわ。でも、それを作るまで、この子の体がもたないわよ。明日一日が限界ね……」
医者の言葉に僅かなため息が落ちる。
「そんなに時間がかかる調合なの?」
セルフィリオーナの言葉に、医者は横に首を振る。
「いいえ、調合自体はさして時間はかからない。問題は、材料よ」
「入手困難なの?」
再び首を振る。
「一種類だけね、入荷するまで時間がかかるの。今すぐ発注しても、届くのは早くて明後日ね。その頃には、この子冷たくなってるわよ」
その言葉に今度はウルが問いかける。
「どこで手に入る?」
「グレイクレイよ。川辺に群生する薬草に強い解毒作用があるの」
その言葉に、ウルは唖然とした。
グレイクレイ、川辺、薬草。
川辺で会ったレナは、確かに¨薬草を摘んでいた¨と言っていた。
─あれがそうだったのか……ッ!
そう思うやウルは部屋を飛び出した。
「ウル! どこに行くんだ?!」
部屋の窓からクレイグが叫ぶ。その声にウルは振り返り、叫び返した。
「薬草に心当たりがある! 取ってくるから調合の準備をしてろッ!」
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