男は小さく頷くとそのままダッシュ。手すりを踏み台にして、空中に躍り出た。
「な……ッ!!」
一瞬クレイグが声を上げ、急いで手すりから再び身を乗り出すと男とキスティンが落ちた先を見下ろす。
そこには、三匹のワイバーンの背中。
その内の一匹に、男とキスティンの姿があった。
ワイバーンの背に取り付けられた鞍に跨(またが)ると、男は手綱を掴み、引いた。
それを合図に、二人を乗せたワイバーンが急上昇していく。
ほぅ……っと胸を撫で下ろすクレイグの後方から、セルフィリオーナの声が飛んできた。
「ほら行くよッ!」
軽い身のこなしで手すりを飛び越え、クレイグを掴んで飛び降りる。
一瞬の無重力感が、クレイグの脳裏にウルに高い上空から落とされた時の事を思い出させた。
「ふぉぉぉぁぁぁぁっ」
意味不明な悲鳴を上げた瞬間、強い衝撃。ワイバーンの高度が一瞬落ちる。
だが、もう慣れているのか、すぐにバランスを取り戻すと上空へと舞い上がった。
体にかかる重力が倍増する。
クレイグは振り落とされないように必死にへばりついた。
見ると、最後の一匹にシミター男が飛び乗り、同じように急上昇してくる姿が目に映る。
その後を、ウルの乗ったワイバーンがついてきた。
ワイバーンは大きく旋回しながら上昇を続ける。
先ほどまでクレイグ達が居たであろう建物の全貌が見えてきた。
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