バサッバサッバサッ……ッ
男が言葉に詰まり沈黙したちょうどその時、辺りに羽音が響いた。
「ラーマ……?!」
クレイグは、手すりから身を乗り出し空をふり仰いだ。
ラーマの放つ羽音とは違う気がする。
もっと軽い音。それも、複数の。
乗り出すクレイグの真下から、一匹の巨大な鳥のような影が舞い上がってきた。
「おぅをッ?!」
思わず後ろに飛び退く。
「ふふ。ワイバーンよ」
クレイグの反応を面白そうに眺めて、セルフィリオーナが言った。
「これでシーズリーから飛んできたの」
「クレイグッ! キスティンッ!」
セルフィリオーナが言い終えた直後、聞き覚えのある声がクレイグの耳に届いた。
「ウルッ!!」
一定の高度を保ち、空中から通路の中を覗くように見るワイバーン。
鳥のそれとは違い、顔に嘴(くちばし)は無く、羽根も生えていない。
テカテカと鈍く光る皮膚が露わになっており、背中からは骨ばった大きな翼のような物が生え、それをしきりに動かして飛んでいる。
その先には、ウルが顔を出していた。
「早く飛び乗れ!」
そう言うや、ワイバーンの顔を掠(かす)めるように下から矢が飛んでくる。
「その子を先に!」
キスティンを抱えて扉の手前に立つ男に向かって、セルフィリオーネが指示を飛ばした。
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