「いた?」
男に、セルフィリオーナが声をかける。
一瞬、クレイグを見た男が身構えたが、セルフィリオーナは片手を上げてそれを制した。
「こいつがクレイグだよ」
クレイグが、「こいつ」呼ばわりに些かムッとした表情を浮かべる。
「で、そっちは? 無事?」
セルフィリオーナは、男の横をすり抜けるように通路を進んだ。
その先には……──。
「キスティンッ!」
別の男に抱えられている人物に、クレイグは声を荒げた。
「生きている、心配するな」
キスティンを抱き抱える男が、「静かにしろ」と言わんばかりにクレイグに言った。
次いで、セルフィリオーナに向かって静かな口調で言う。
「でも、だいぶ衰弱しています。もしかしたら毒を盛られたのかもしれません」
男の腕の中で苦しそうに息をつくキスティンを見やり、セルフィリオーナは舌打ちをした。
「処刑の時に暴れないようにか」
クレイグがギョッとした顔をしてセルフィリオーナに向いた。
「処刑?! キスティンが?!
何で?!」
「後で説明するよ。それより、オーブ、無くしてないだろうね」
セルフィリオーナの声に、ポケットに入れた卵形の球を取り出す。
「これ?」
僅かな光に反射して、クレイグの手の中でキラッと光る。
「それ。さぁお前達、引き上げるよ。長居は無用だ」
そう言うと、彼女は再び来た道を引き返した。それに続く二人の男とクレイグ。
扉を出ると、さっきよりも遙かに爆音が近づいていた。
_

