確かに、ウルの状況判断は的確だし、行動に迷いも無いが、いくら何でも一人で多くの人数は相手に出来ない。
ウルは魔術師なんだ。そんなに力が強い訳でもない。
剣術に長(た)けたクルセイダーに接近されたらひとたまりも無いはず。
そんなクレイグの心を読んだように、前を歩くセルフィリオーナが呟いた。
「ウルなら大丈夫よ。あたしの部下が一緒にいる。あいつら、意外と腕が立つんだ。
ちょっとやそっとじゃやられないさ」
絶対の自信を含んだその言葉に、クレイグは眉を寄せる。
「部下? あんた、何者なんだ?」
ちょうど、壁に沿って取り付けられている一つの扉の前に差し掛かった時、セルフィリオーナはクレイグを振り返った。
その顔に、少し悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「盗賊」
扉のノブに手をかけ、開いた。
扉の先には、再び通路が延びている。
人の気配を感じた。クレイグは、中に入ろうとするセルフィリオーナの腕を咄嗟に掴んで引き留める。
だが、彼女は「大丈夫。分かってる」と言う笑みを向けて、クレイグの手をそっと離した。
そして、今度は足音を隠さずにコツコツと音を立てて普通に歩いていく。
それを困惑気味に見つめながら、後を追うように入りドアを閉めるクレイグ。
奥の方から小さな男の声が聞こえた。
「アネゴ……! ここです」
声とともに、一人の男が光の当たる場所に出てきた。
相変わらず光量が弱く、人相までははっきりと分からない。
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