牢の前の通路を、セルフィリオーナを見失わないように必死に走るクレイグ。
通路は、クレイグの予想通り短いものだった。片側にクレイグの閉じこめられていた部屋を合わせて、三部屋並んでいた。
クレイグが閉じこめられていたのは、三部屋の内一番奥の突き当たりにある部屋。
他の二部屋も、同じような小さな格子の付いた鉄の扉に閉ざされていた。
通路の先にあるのは、格子の無い木製の質素な扉。
その扉を開いた瞬間、おそらく様子見に来たのであろう一人のクルセイダーとはち合わせる。
「あら」
「げ」
「なッ?! 脱走……!?」
ハッとしたように、腰にさす剣に手を伸ばすクルセイダー。だがそれよりも一瞬早く、セルフィリオーナの手が、クルセイダーの伸ばす手を掴んだ。
そのまま、自分の横をすり抜けさせるように思いっきり引き寄せる。クルセイダーの体がバランスを崩し、前のめりになった。
その勢いのまま、掴んだ腕を捻り上げると、クルセイダーはバランスが取れずに地面に倒れ込んだ。
ほんの一瞬の出来事を、クレイグは唖然とした表情で見ていた。
普通は、咄嗟にそんな行動は取れない。
─エルフって、すっげぇ……!!
クレイグは、心底尊敬の眼差しをセルフィリオーネに向けた。
地面に倒れ伏したクルセイダーが、何とか起きあがろうともがくが、その背中にセルフィリオーネが足を乗せて押さえつけた。
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