キィィ……。
ゆっくりと開かれた扉の先には、牢屋には全く似つかわしくない程の美しい女性が立っていた。
耳が尖っている所を見ると、エルフなのだろう。手には、針金のような銀色の細長い棒が握られていた。
「牢屋の鍵って案外ちゃちいのね」
澄んだ声が部屋に響く。
「あんたがクレイグね? ウルから頼まれたの。迎えに来たわ」
そう言うと、笑みを浮かべた。
知った名前に、クレイグは驚く。
「あいつも来てんのか?!」
クレイグの言葉に、女性は肩を軽く竦ませた。
「今、まるで積年の恨みを晴らすかのように暴れてる。あたしはセルフィリオーナ。セフィって呼んで」
そう言って右手を差し出した。握手を求めての事だろうが、今、クレイグは右手を痛めている。
仕方ないので、左手を差し出し、際どい姿勢で握り返した。
だが、何かが手の中にあることに気が付き、視線を落とす。
そこにあるのは、小さな卵形の球。
「何だこれ」
「ワードアイテムよ」
眉を寄せて球を凝視するクレイグに、セルフィリオーナが言った。
「わぁどあいてむ?」
さっぱり分からないと言うように首を傾げながら復唱するクレイグ。
「使い方は教えるから、とにかくここを出るわよ!」
そう言うとセルフィリオーナはクレイグに背を向けて走り出した。
「ちょッ! 俺、体中痛くて走れないんですけど?!」
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