眠るコパンを置いてホールに戻ると、そこには盗賊達に囲まれた一人の男の姿があった。
男は、ウルを見るなり嬉しそうに声を上げる。
「ほらあのにーちゃんッ! 俺、あのにーちゃんの友達ッ!」
そう言いながら人の群をかき分けてウルに寄ってきた男は、シーズリーの街から何故かずっと付いてきた男だった。
「あー、怖かった。いきなりクルセイダーと戦うんだからなぁ……」
はぁぁっと深くため息をつく男。
「……あんた、こんなとこまで着いてきたのか…?」
ウルの言葉に、男はチッチッチッと舌を鳴らしながら顔の前で右手の人差し指を立てて左右に振る。
「俺、レインって言うんだ。自己紹介してなかったよな! あんたは?」
今度は、ウルが深いため息をついた。
「帰れ。二度と俺に近づくんじゃない。今回は人数が多かったから助かっただろうが、次もそうだとは限らない」
突き放すように放ったウルの言葉に、レインと名乗った男は目を丸めた。
呆然とするレインを余所に、ウルはホールの天井、ガラス張り越しに空を見上げる。
空には、既に闇が広がっていた。
もう、時間がない……。
ウルは後ろを振り返り、付いてきていたエルフ女に声をかけた。
「ここからマグライトまでどれくらいかかる?」
エルフ女が肩を竦(すく)ませる。
「その気になれば、一時間かな」
予想より遙かに短い時間を掲示され、信じられないと言うような顔を向けるウルに、彼女は鮮やかな笑顔を見せた。
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