「声をかけ続けてッ! 一瞬でも意識を無くしたら終わりだと思いな!」
エルフ女の声に、ハッと我に返る。
「コパン、大丈夫だからな。すまない、お前を抱えたまま戦うなど……俺がどうかしていた…ッ!」
エルフ女に声をかけられた盗賊が、布と小さな椀に入れた水、薬草を手に持ち走ってきた。
それを奪うように受け取ると、水に薬草を浸し何かの呪文を唱える。
すると、水がグルグルと水流を作り、薬草を粉々に切り刻んでいく。すぐに薬草は原型を失い、水が緑に着色された。
その水に浸した布で、絞りもせずに傷口を拭き上げるように撫でる。
もう感覚が無いのか、コパンは「はぁはぁ」と荒く息をつくだけで動かない。
拭いた傷口から、白い湯気のような物が出る。それを、ウルはただ黙って見守った。
傷口を全て吹き上げ、残った水を小さく切った数枚の布に染み込ませて傷口に被せる。
そこで、エルフ女は思い出したように声を上げた。
「包帯持ってきなッ!」
声に、先ほどの盗賊が再び走り出す。それを見送ってから、エルフ女はコパンの頭を優しく撫でて言った。
「もう大丈夫、さっきお薬塗ったから。良く頑張ったね。偉いよ、あんた強いね」
エルフ女の声が届いたのか、コパンは汗をだらだらと流しながらも笑顔を作った。
「あ、り、が、と、う」
声は出ない。それが自分でも分かっているのか、コパンは口を大きめに開いてそう形作った。
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