ドラゴン・テイル


 一触即発の張りつめた空気を破ったのは、何とも気の抜けた声だった。

「うるーッ!」

 木々の間に響きわたる、甲高い幼い声。

 エルフ女が後ろを振り返る。
 その足下には、体を汚れた包帯でグルグルに巻かれた小さな姿。

「……………コパン……?」

 見覚えのある顔に、思わずウルは名前を呟いた。

 エルフ女の足下をすり抜け転がるように駆け寄ると、ウルの腕に飛び込んできた。

「ウル、よかった! コパン、怖かった」

 コパンは嬉しそうにウルの腕の中で言った。

「……こ、コパン、どういうことだ? お前、確かあの時切られて……」

「あたし達が見つけたときは瀕死だった」

 ウルの言葉を引き継いだのは、エルフ女。

 彼女はウルに近寄り、コパンを覗き込むように上体を傾ける。

 思わず一歩下がるウルには目も向けず、話を続けた。

「見つけた時、この子ずーっと『ウル、ウル』って呟いてたのよ。そのままほっといても良かったんだけど、まだ子供じゃない? 思わず拾って介抱したんだけど……」

 言葉を区切り、ウルに視線を向ける。エメラルドグリーンの瞳が、ウルを捕らえた。

「この子から、話聞いたの。なんか、子供のクセに必死に『ウル探す』って。そればっかり言ってたけど」

 ウルは、コパンを見下ろした。まだ出血が止まらないのか、血の滲む包帯が痛々しい。


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