「なッ?!」
男が驚いて声を上げる。
ウルは、ざっと辺りに目を配った。
道の脇に生えた細い木々。
その間を、一瞬駆け抜ける影……─。
影の向かう先に目を向けると、木陰の一角に今見た時には無かったはずの人影が三つ。
─…いつのまに……ッ!
ウルは小さく呪文を唱え……─。
ヒュンッ
三人の内、真ん中の人物が目にも留まらぬ早さで放った矢が、ウルの頬を掠れんばかりの位置を突き抜ける。
「魔法は使わせないよ」
響いた声は、女。
一歩、陽の当たる場所に出る真ん中の影。照らされた姿は、グリーンの髪をポニーテールに結び、お腹を出すように露出度の高い服を来た女性。
胸下までの短くダボッとした黒いTシャツを胸の前でクロスしたベルトで固定し、同じく黒いショートパンツ姿。
腰から斜めにかけるように回したベルトには矢筒らしき物が下がっており、手には弓が握られている。
だが、服装よりも目を引いたのは……
「え、エルフ……?」
尖った、耳。
男の乾いた声に、女はフッと笑みをこぼした。見る者を全て虜にしてしまいそうな妖艶な笑顔。
「ごめんなさいね、あんた達の有り金、全部頂戴させて頂くわ」
そう言うエルフ女の声を合図に、ウル達を取り囲むように現れた複数の人影。
それぞれが武装し、手には剣が握られている。殺気にも似た鋭い眼光を向ける二十人程の男集団。
「と、盗賊……ッ!」
男の声に、一斉に武器を構える盗賊達。
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