ドラゴン・テイル


 街道を南に歩くウルの後ろからは、相変わらず男が付いてくる。

 ─何でこんなのに懐かれたんだ、俺…。

 馬車でこの男に居合わせた自分の運を早くも呪った。なんてツいてないんだ……。

「なぁ、これからどこに行くんだ? この先のルーヴァはもう見るとこ無いらしいぞ?」

 相変わらず、男はウルに話しかける。

「ルーヴァに行く訳じゃない」

 一言返すと、倍の質問が返ってきた。

「じゃ何しに行くんだ? ここから先は何もないんだぞ? 遺跡もダンジョンも。意味わかんねぇよ。それに、ここいらには盗賊が出るんだぞ?」

 静かな街道に、男の声だけが響く。

「盗賊か、そりゃ怖いな。見つかりたく無いから黙ってくれ」

 素っ気なく言うウルの言葉に、男は声を詰まらせる。

 ウルの言うことも、もっともだと思ったのだろう。黙って付いてくる。

 ─……ホントなら追い返してーんだけどな……。

 今は、誰とも関わりたくなかった。

 クレイグ達のように、命を危険に曝してしまいそうで。

 しばらく無言で歩いている内に、複数の足音が聞こえることに気づいた。

 ─五人……六人……いや、もっとか…?

 極力気づかない振りをして歩きながら、人数を数える。

「あーっ! もうだめ! 喋り無しでただ歩くなんて俺には無理ッ!!」

 男がそう叫んだ瞬間、風を切る音と共に、ウルと男の間の地面に一本の矢が突き刺さった。

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