ドラゴン・テイル


「なぁ、あんたの名前……」
「いい加減にしろよ」

 男の言葉を遮り、クルッと後ろを振り返ってウルが言った。

「俺がどこに行こうが、あんたに関係無いだろ。金魚の糞みたいにちょろちょろ付きまとうな」

 男は驚いたように大きく目を開き、

「やっと喋ったな」

 ニッと笑う。

 ─…だめだ、この手の人種は何言っても無駄だ……。

 はぁ、と短くため息を吐き、再び歩き始める。男は相変わらずウルの後を付いてきた。

「だめだぞー? 若いモンがため息ついちゃ幸せが逃げるんだぞ?」

 誰のせいだ。

 心の中で突っ込むウル。

 連結本部正面から真っ直ぐ延びたメインストリートも終わりに差し掛かってきた。前方に、街を囲む高い塀と門が見える。

 門の両脇には小さな兵舎があり、門兵が一人ずつ立っていた。

「マジですぐ出るの?」

 歩調を変えることなく歩くウルの後ろで男が呟く。

 近づくウル達に、門兵が視線を向けた。

「よぉ、レイン。今日はどんなお宝持ってきたんだ?」

 門兵の一人がウルに……ではなく、ウルの後ろの男に声をかける。

 反対に立つ門兵も、笑いを堪えるように肩を震わせている。

「うるせぇよ。これから行くんだ!
 こ・れ・か・ら!」

 言い返す男を余所に、ウルは門兵にカードを渡す。

 それを受け取り、門兵は笑顔を向けた。

「御武運を。変な商人に引っかからないようにな」

 それを聞いたもう一人の門兵は、堪えきれず声を上げて笑い出した。


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