カードを受け取り、建物を後にするウルに、誰かが声をかけてきた。
「おぉいっ! にーちゃん!」
声に振り返ると、男が笑顔で歩み寄ってきた。馬車にいた男だ。
「ずいぶん早く街出るみたいだな、そんなに急いでどこに行くんだ?」
見た感じ、二十歳を少し過ぎたくらいだろうか、金髪で短く刈り上げた髪型で、肩から大きな鞄をさげている。
軽装なみなりだが、腰に差した綺麗な装飾の施された短剣が彼を普通の人ではないことを物語っている。おそらく、旅商人。
短剣に向いたウルの視線に気づいたのか、男はさっと隠すように持ち、
「だーめだめっ! これはあげないぞぅ! こいつがなきゃ旅出来ねぇんだからなッ!」
少しおどけたように言った。
どこからどこまでが本気なのかわからないが、大切な短剣だと言うことは何となくわかった。
だが、どうでもいいこと。
「別に欲しいわけじゃない」
そう言うと、男を置いてさっさと歩き出す。それを慌てて追いかける男。
「あんたは何しにここに来たんだ?」
「見たところ丸腰だが、そんなんで旅してんのか?」
「グレイクレイの出身なんだろ?」
「なぁ、お願いだからシカトしないで〜」
まるで人なつっこい犬のように付いてくる男に、ウルはうんざりしてきた。
一人ひたすら喋りかけながら歩く男の姿は、どうしても人目を引いてしまう。
まるでクレイグと出会った時のようだ。
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