「こんにちは」
カウンターの向かい側に座る女性が声をかけた。
「転入手続きですか?」
「あぁ」
何かの書類にカリカリと文字を書いていく。
「永住?」
「いや、すぐに出る」
女性が少し顔を上げる。
「いつ出られますか?」
女性に、僅かに苦笑を向け、
「すぐだ」
困ったように答えた。
ウルの顔を見ていた女性は少し顔を赤らめ、再び書類に記入していく。
「少々お待ち下さい」
書類を手に、女性は席を立ち奥の部屋へと入っていった。
女性の姿が見えなくなると、ウルは辺りを見渡した。
長いカウンターには、民間人や旅人のような人が並んでカウンター越しにそれぞれ話している。
壁沿いには椅子が並んでおり、年輩の人や子供が座っていた。
─ザイルとはずいぶん違うな……。
辺りを眺めながら、思う。
ザイルにも住民手続きをする建物があるが、こことは違い、狭い室内に所狭しとテーブルが置かれていて、そのテーブルで従業員の説明を受ける。
一週間程度の滞在なら申告の必要も無く、訪れる人も少ない。
そんな事を思っているうちに、奥の部屋から女性が戻ってきた。
手には、先ほどの書類ではなく小さなカードを持っている。
そのカードを、カウンターに滑らせるように置く。
「お待たせしました。臨時住民カードです。再発行は出来ませんので、無くさないようお願いします。このカードは街を出るときに門兵へお返し下さい。
また街に戻られる場合は、もう一度手続きに来て下さいね」
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