馬車は街を進み、商人連結本部の前で止まった。
「この街に入る時は、どんなに短時間の滞在でも街に入る手続きをしなきゃいけないんだ」
業者がウルに言った。
「手続きはこの本部で出来る。忘れずにしとけよ」
見ると、馬車を降りた客はみんな建物に入っていく。
ウルも、馬車から降りると建物を見上げた。
真っ白い外壁が地面から延びている。屋根の部分は丸く一番上の先端が尖っており、旗が掲げられていた。
グランドール王国の国旗のようだ。
遠目にはよく分からなかったが、建物はいくつかの棟に分かれており、今ウルが立つ真ん中の棟が一番大きい。
ため息が出そうな程真っ白に塗り上げられた建物をしばらく見上げていたウルは、意を決したように入っていった。
玄関ホールは、建物の屋根まで吹き抜けになっている。見上げると、ボールのような屋根が天窓になっていることに気づいた。
陽の光で、建物は明るく暖かく照らされている。
当然というか、建物の中も白かった。ここまで白尽くしだと、綺麗を通り越して不気味だ。
ホールを抜けると屋根が低くなり、ここからは各階層に分かれていることを暗に告げている。
一通り見渡してから、ウルは「転入手続き」と札が下げてあるカウンターへ向かった。
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