「だだの、野暮用だ」
短く答える。業者は、クックッと笑いを堪えるように喉を鳴らす。
「気をつけな。シーズリーは商人の街だ。変にウロウロしてるとひでぇ目にあうよ」
そう言うと、前に向き直った。
意味が分からないと言うように、同乗していた客を見るが、その客も業者と同じように笑っている。
一体なんなんだ?
薄気味悪い気持ちになり、ウルは視線を逸らすと窓から外を眺めた。
細い街道の脇にはポツポツと細い木が生えており、ちょっとした林のようになっていた。
同じような景色がしばらく続いた後、小高い丘のような場所に出た。
眼下に広がる景色を見て、ウルは一瞬息を呑む。
真っ白い街並み。真ん中にある大きな建物を中心に、四角く象(かたど)られたように広がる巨大な街。
「真ん中のでかい建物が見えるかい? あれが、この国の商人を束ねる商人連結本部の建物さ」
業者が自慢げに話す。
その巨大な建物から、均等な間隔を空けて八方に延びる道。
おそらく街のメインストリートなのだろうが、ザイルやグレイクレイで見たそれよりも遙かに大きい。
メインストリートの脇に立ち並ぶ建物はどれも白を基調にしたものばかり。
「すごいだろう?」
客の一人が、窓から身を乗り出すようにシーズリーの街を見下ろしながら言った。
「あの街は、この国の旅商人が拠点にしてる場所なのさ」
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