「はい。あ、有り難うございます。では」
─カチャン。
扉の閉まる音が聞こえた。
ウルは、レナが出て行った部屋のドアに視線を向ける。
だが、しばらく待ってもレナは姿を現さなかった。
不信に思ったウルは部屋を出て玄関に視線を向ける。そこには、扉に向かってうずくまるレナの背中が見えた。
「……レナッ?! どうしたんだ?!」
急いで駆け寄りレナの肩に手をかける。
一瞬、レナの体がビクンッと震えた。
その拍子に、レナの手から一枚の紙切れが落ちる。
その紙を拾い上げ、読む。
言葉無く、紙に書かれている文字を食い入るように見るウルに、レナはうずくまったまま呟いた。
「……どういう…事ですか……?」
レナの言葉に、ようやく紙から視線を外す。
レナは、ゆっくり顔を上げてウルを見つめた。瞳にはうっすら涙が浮かんでいる。
「………」
ウルは、言う言葉が浮かばなかった。
今までのことを告げれば言いだけなのに、レナの瞳を見ると言葉が出ない。
「……ッ! 説明してッ!!」
レナが、声を張り上げる。
絞り出す声は、怒りのせいなのか悲しみのせいなのか、うまく言葉にならない。
「なん……ッ、何、でッ?!」
レナの声はウルの心に突き刺さった。
紙が、ウルの手から滑り落ちた。
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